クラシックなデザインか現代的なデザインか、手動か電動かなど、コーヒーミルの分類の仕方はさまざまです。
しかしコーヒーミルの本質は、コーヒー豆を粉にすること。
ミルの特性を大きく左右するのは、何より「粉砕方式」です。
ここでは「粉砕方式」でコーヒーミルを分類していきます。
コーヒーミルには4種の粉砕方式がある
コーヒーミルの粉砕方式は、発信者によって分類の仕方や呼び方がさまざま。
下手をすると、それぞれの特徴すら反対に説明している例もあります。
これじゃ、初めての方は迷ってしまいますよね。
ここでは、コーヒーの粉砕について権威である、石脇氏の分類を参考に紹介します。
参考:「コーヒー「こつ」の化学」、全日本コーヒー協会公認「コーヒー検定教本」
コーヒーミルの粉砕方式は、大きく4つに分類できます。
- コニカルカッター
- ブレードグラインダー
- フラットカッター
- ロールグラインダー
(写真)それぞれの粉砕方式のイラスト
コニカルカッター
(イラスト)コニカルカッター
コニカル(Conical)とは「円錐」という意味。
円錐状の回転する内歯と、固定された外歯で構成されているのがコニカルカッターです。
欧米ではバーグラインダー(Burr Grinder)とも呼ばれています。
ちなみにデロンギ社では、コーン式(Cone)と呼んでいたり。
ねじやダイヤルで円錐状の内歯を上下させ、外歯との隙間を変化させることで、コーヒーの粉の粒度を調節します。
最近では外歯を上下させる新型も出てきているようです。
コニカル式は、原理的には無段階に粒度が調整できます。
そのため、コーヒーミルによっては粗挽きからエスプレッソ用の極細挽きまで、幅広く調整できるものもあります。
手動のコーヒーミルは、ほとんどがこのコニカルカッター。
コーヒーミルの粉砕方式といったら、皆さんこのタイプを思い出すのではないでしょうか。
また、電動の製品も多くあります。
調整できる粒度の範囲が広いため、エスプレッソ挽きができる電動コーヒーミルはこのタイプが多いです。
家庭用の1万円前後のお手頃なものから、数十万する業務用のものもあります。
家庭用の電動式コーヒーミルの中では、やや価格が高い分類になりますが、用途も広くお勧めの粉砕方式です。
コニカルカッターは、粒度の均一性も良いです。
よく、手動のコーヒーミルが、ナイスカットミルなどのフラットカッター式と比べられて、粒度の均一性が劣ると紹介されることがあります。
それは、粉砕方式が問題なのではなく、シャフトのブレや歯の精度といった製品仕様によるものと思われます。
ブレードグラインダー
(イラスト)ブレードグラインダー
金属製の羽根を非常に高速で回転させ、衝撃でコーヒー豆を粉砕するのがブレードグラインダーです。
ジュースやスムージーを作る、ミキサーと同じ構造だと言えば想像しやすいでしょうか。
(実際にコーヒー豆が挽けるミキサーもあります。)
プロペラ式や、カッター式と呼ばれることもあります。
「カッター式」という呼び方だと、フラットカッターやコニカルカッターと紛らわしいですね。
後述のフラットカッターが「カット式」と呼ばれることもあるので、ますます混乱してしまいます。
ここでは間違えのないように、ブレードグラインダーで統一したいと思います。
このブレードグラインダーは、他の粉砕方式と違い、正確にコーヒーの粒度を調整する機能がありません。
そのため、粉砕している時間で大まかに粒度を調整するしかありません。
また、一度粉砕し終わった豆に何度も羽根が当たってしまうことで、微粉が発生しやすい傾向にあります。
挽き終わったの粉の品質に関しては、少々難があると言えるでしょう。
一方、長所もあります。
まずは、粉砕速度が非常に速いこと。
1〜2人分のコーヒー豆なら、ほんの数秒で粉にしてしまいます。
私も初めて使ったときは、「えっ?もう挽けたの!?」とびっくりしました。
次に、とっても価格が安いこと。
他の粉砕方式と違って打撃で粉砕するため、力より回転の早さの方が重要になります。
よってモーターの回転数を落とす必要がないので、減速用の歯車などのパーツが少なくてすみます。
また、羽根でコーヒー豆を粉砕するので、製造コストの高い「歯」も必要ありません。
よって構造がとてもシンプルで、非常に価格が安いです。
最後に、掃除がとっても楽なこと。
コーヒー豆を入れるスペースと、ブレードしかないので、ちょっとブラシで掃除するだけで簡単に綺麗になります。
ブレードグラインダーはお求めやすい価格ということもあり、様々なメーカーから様々な機種が販売されています。
フラットカッター
(イラスト)フラットカッター
フラットカッターは、コニカルカッターと同様に「回転歯」と「固定歯」からなる粉砕方式ですが、歯が平面状になっているのが特徴です。
喫茶店などの業務用で見かけることが多い構造で、それを小型にしたタイプが家庭用の上位機種などでも採用されています。
この粉砕方式は、製品によって歯の材質・形状が大きく異なります。
金属の歯でも、切削加工で出来た鋭利なものや鋳造で出来た丸みを帯びたものがあり、セラミック製の臼の様な歯もあります。
鋭利なタイプのものは、極細挽きには対応していないけど粒度の均一性が高かったり、臼型のものはエスプレッソ用の極細挽きに対応していたりと性能も様々です。
「フラットカッターとは〜」とひとくくりでは説明が難しく、それぞれの製品によって異なる、というべきかもしれません。
ただ、一般に使用者の感想として、業務用を小型化したような家庭用のフラットカッター上位機種においては、挽き終わった粉の均一性が高いと言われています。
一方、そうした機種はエスプレッソ用の極細挽きはできず、エスプレッソを楽しみたい人は電動のコニカル式を選ぶケースが多いようです。
ロールグラインダー
(イラスト)ロールグラインダー
別名、グラニュレーターとも呼ばれています。
溝を切った金属製のロールとロールの間で、コーヒー豆を粉砕する方法です。
このロールは隙間が違うものが何本もあり、コーヒー豆は隙間の大きいロールから小さいロールへと送られ、段階的に細かい粒度になります。
そのため、その他の方式とは一線を画する均一な粒度となります。
また、ロールとロールの間には溝のような歯面があり、コーヒー豆をすりつぶすのではなく破断して細かくします。
長時間コーヒー豆を引き続けても、摩擦熱を持ちにくい特徴があります。
ロールグラインダーは一般的に大型の機械で用いられ、工場で使用される方式です。
基本的に産業用で用いられる方式ですので、あまり一般の方は聞き慣れないかと思います。
ちなみに、コーヒーのエイジングで有名な銀座のカフェ・ド・ランブルでは、特注で作ったロールグラインダー式のコーヒーミル(リードミル)が置いてあるそうですよ。
(写真)リードミル