「手動のコーヒーミルで豆を挽くのは大変そう。でもコリコリと挽く感触は楽しそう。」
「電動のコーヒーミルはちょっと高いけど、とっても早くて疲れなさそう。」
初めてコーヒーミルを選ぶとき、手動と電動のどちらを選ぶか、迷ってしまいますよね。
それぞれどのような良さがあるのでしょうか。
ここでは、手動コーヒーミルと電動コーヒーミルの特徴を紹介して、選ぶお手伝いをしたいと思います。
手動と電動だけじゃなく粉砕方式とセットで比較しよう
前項で紹介したように、コーヒーミルの特性は「粉砕方式」で大きく変わってきます。
手動コーヒーミルの粉砕方式は殆どが「コニカルカッター」なので、一括りで考えてもそこまで差し支えはありません。
一方、電動コーヒーミルは3種の粉砕方式があります。
- コニカルカッター
- フラットカッター
- ブレードグラインダー
これらの方式で特性は大きく異なりますので、別々のものと考えたほうが良いでしょう。
したがって、単純に「手動コーヒーミルv.s.電動コーヒーミル」という比較をするのではなく、粉砕方式とセットで比較していきます。
手動 | 電動 | |||
---|---|---|---|---|
コニカルカッター | コニカルカッター | フラットカッター | ブレードグラインダー | |
価格 | 1,500円程度台〜 | 10,000円程度〜 | 20,000円程度〜 | 2,000円程度〜 |
エスプレッソ挽き (極細挽き) | ◯ できるものが多い | ◯ できるものが多い | △ 歯を交換すれば可 | × 不可 |
粒度の均一性 | △〜◯ 構造による | ◯ 均一 | ◎ 特に均一 | × ばらつく |
掃除のしやすさ | ◯ 分解可、丸洗い | × 分解難 | × 分解難 | ◎ 分解不要 |
挽く速度 | × 遅い | ◯ 速い | ◎ 特に速い | ◎ 特に速い |
豆を挽く感触 | ◯ あり | × なし | × なし | × なし |
アウトドア | ◯ 電源不要 | × 重い、電源要 | × 重い、電源要 | △ 軽い、電源要 |
騒音 | ◯ 静か | × かなりうるさい | △ うるさい | △〜◯ それなり |
手動コニカルカッター
いわゆる手動のコーヒーミル。
円錐状の回転する内歯と、固定された外歯で豆を粉砕します。
手動のコーヒーミルは、殆どがコニカルカッター式です。
ちなみにコニカル(Conical)とは円錐という意味。
長所
・お手頃な価格
とってもお求め安い価格。ミル入門にはうってつけです。最近ではAmazon等で2,000円を切る製品も多く出てきているので、気軽に購入できます。
・エスプレッソ挽きが可能な製品が多い
セラミック歯のタイプのものだと、エスプレッソ挽きが可能なものも多いです。ただし、エスプレッソ挽き(極細挽き)は時間がかかるため、毎日手動で挽くのはちょっと非現実的かもしれません。
・粒度の均一性は悪くない
コニカルカッターなので、原理的に粒度は揃います。ただし、安価な製品には、内歯の回転軸を1点だけで支えているタイプも多く、粗挽きだと粒度がバラバラになりがちです。それでも、細挽き〜中挽きくらいであれば十分な均一性があります。
フレンチプレスやネルドリップなどの、粗挽きが必要な抽出方法を検討されている方は、シャフトを2点で支えるタイプのミルを選ぶことをお勧めします。
また、最近では1点支えの安価なミルを2点支えに改良するグレードアップパーツも販売されています。
セットに手間はかかりますが、安価にとっても均一な粗挽きコーヒーが挽けますので、こちらもおすすめです。
・掃除がとってもしやすい
電動のミルに比べて、内歯がとっても簡単に外せます。
使うたびにブラシで気軽に掃除ができます。
また、最近はセラミック歯で本体ごと水洗いできてしまう製品も増えました。
古いコーヒーの粉が内部に残らないので、コーヒーに雑味がでにくいです。
・電源不要なのでアウトドアでも使える
アウトドアが好きな人には、必須の条件ですね。
どこでもコーヒー豆を挽けるのは、手動コーヒーミルの大きな長所です。
・手動なので挽くときの音が静か
意外と盲点なのが、「音」なんです。
電動コーヒーミルでコーヒーを挽くとき、結構な騒音がします。
家族が寝ていたり、真夜中だったりすると、音のためにコーヒーを飲むのを諦める人もいるようです。
手動のコーヒーミルはモーターを使わないし、回転数が低いので、とっても静か。
寝ている家族を起こすこともありません。
・豆を挽く感触が楽しい
体験しないとなかなか伝わりにくい項目です。
豆をゴリゴリ挽く感触って、実はとっても気持ちいいです。
これからコーヒーを入れるぞ!というワクワクと、手に伝わってくるコーヒー豆が粉になっていく感触。
手動コーヒーミルの醍醐味でもあります。
短所
・挽くのに時間がかかって疲れる
最大の短所がコレ!やっぱり疲れます。
ただ、豆の挽き方(粗さ)によって、大変さが大きく変わります。
以前、ポーレックスのコーヒーミルで、ペーパードリップ1人前12gのコーヒーを挽いた時の、回転数を計測してみました。
すると、粗挽きなら約60回転。
1秒間に2回転ハンドルを回した場合、約30秒です。
一方、エスプレッソ用の極細挽きなら、約130回転。
これだと、約65秒ほどかかることになります。
細かくする分、倍の時間がかかるようです。
体感では、粗挽きで1人前程度であれば、あまり疲れずに気軽にコーヒーを楽しめます。
極細挽きで2人前以上になると、疲れ果ててしまいました。
エスプレッソを毎日飲みたい方には、ちょっと手動で挽くのは大変かな、と思います。
電動コニカルカッター
家庭用では中価格帯の電動コーヒーミル。
コニカルカッター式の粉砕方式を電動化したコーヒーミルです。
業務用では、エスプレッソマシンを置く店なら必ず置いてあるタイプになります。
長所
・速く挽けるし疲れない
電動なので速く挽けますし、何より疲れません。
速度はフラットカッターの方が速い製品が多いです。
・エスプレッソ挽きが可能
コニカルカッターの特徴として、エスプレッソ挽きが可能です。
エスプレッソをメインで楽しみたい方は、電動コニカルカッターがおすすめです。
・粒度が均一
電動コニカルカッターは基本的にシャフトも2点支え、歯の精度もいいため、粒度がとっても均一です。
選べる粒度の範囲も広く、これ一台あれば全ての抽出方法に対応できると言っても良いと思います。
短所
・やや価格が高い
電動フラットカッターほどではないのですが、1万円前後はするものが多く、手動コーヒーミルや電動ブレードグラインダーに比べるとやや敷居が高くなります。
・掃除がしにくい
高速回転しても問題ないように、内歯と外歯の固定がしっかりしています。
そのため、簡単に歯を取り外しできないものが多く、掃除はしにくいです。
ブラシが届く範囲は掃除できますが、水洗いなどは基本的にできません。
・電源がいるのでアウトドアでは使えない
電源も必要ですし、やや重いのでアウトドアには向いていません。
・かなりうるさい
全方式の中で一番うるさいのが、この方式だと感じます。
フラットカッターに比べて挽く時間がやや長いので、特にうるさく感じるのかもしれません。
音に敏感な方は、夜中にはちょって遠慮してしまうかもしれません。
電動フラットカッター(見出し1)
フラットカッターは、コニカルカッターと同様に「回転歯」と「固定歯」からなる粉砕方式ですが、歯が平面状になっているのが特徴です。
フラットカッター式は範囲が広いので、厳密にはなかなか一まとめにできません。
ここではカリタ社のナイスカットG、富士珈機のみるっこのような、半業務用のタイプを想定して説明いたします。
長所
・粒度が特に均一
電動フラットカッターはコーヒー豆をカットするように粉砕する機種が多く、これらは粒度が特に均一で微粉も非常に少ないです。
エスプレッソ用の極細挽きはできないものの、細挽き〜粗挽きに関しては家庭で手に入る中でもっとも高品質のコーヒーの粉が得られます。
・挽く速度がとっても速い
半業務用と言っても差し支えがないほどの仕様ですので、速いものが多いです。
一人前のコーヒー豆なら10秒もかからず粉砕するものもあります。
大人数用に一気に挽くときも、まったくストレスがないです。
短所
・価格が高い
数万円する機種が多く、特に上級者の方が購入するイメージです。
小さな喫茶店で疲れているものも多く、半業務用といえる機種が多いです。
・エスプレッソ挽きができない
基本的に、エスプレッソ挽き(極細挽き)はできません。
ただ、エスプレッソ用の専用歯に付け替えることで、極細挽きができる機種もあります。
エスプレッソが目的の方は、電動コニカルカッターの製品をおすすめします。
・掃除がしにくい
回転歯を取り外すには、レンチなどの工具でボルトを外すタイプが多いです。
あまり気軽には掃除できない構造です。
・電源がいるのでアウトドアでは使えない
電動コニカルカッターと同様です。
・ややうるさい
電動コニカルカッターより速く挽けるためか、ややうるさい程度に感じます。
電動ブレードグラインダー
電動コーヒーミルの中で、もっとも一般的に普及している安価なタイプ。
金属製の羽根を非常に高速で回転させ、衝撃でコーヒー豆を粉砕するのが電動ブレードグラインダーです。
プロペラ式ミルと呼ばれることも多いです。
長所
・価格が安い
電動コーヒーミルの中では、最も安いです。
歯が不要で構造が簡単なので、下手な手動コーヒーミルよりは安いものが多いです。
・掃除がもっとも簡単
水洗いこそできませんが、構造が簡単なので、ブラシで掃除するだけ古い粉が残りません。
手動コーヒーミルよりもさらに掃除が簡単なミルです。
・挽く速度がとっても速い
意外な点ですが、電動コニカルカッターよりも速いと感じます。
1人前程度の粗挽きなら数秒で完成します。
かなり速いので、実は大きな長所です。
・音はそこまでうるさくない
音がないわけではないですが、ゴリゴリという挽く音の代わりに、豆が内壁にあたる「カンカンカン!」という音がします。
コニカルカッター式やフラットカッター式よりは静かです。
・アウトドアでも使える機会があるかも
電源は必要ですが、本体はとっても軽いです。
手動と違い、一気に大量の豆が挽けるので、電源が確保できる場所なら活躍しそうです。
短所
・粒度が調整できず、粒度が均一にならない
最大の短所です。
ブレードでコーヒー豆を粉砕する方式なので、基本的に粒度の調整機構がありません。
挽いている時間を長くすれば細かくなり、短くすれば荒くなります。
粒度はとてもバラつきがあり、微粉は非常に多め。
茶こしで微粉を除去しないと、コーヒーの味にかなり雑味が出てしまいます。
中級者以上になると、ちょっと物足りない性能です。
挽きながら本体をシェイクすれば、少しばらつきが減ります。
結局どのタイプがおすすめなの?
ミルラボでは、手動コニカルカッターのコーヒーミルを強くおすすめします。
「え?手動コーヒーミルは挽くのが大変じゃないの?」
「手動も電動も一長一短でしょ?」
と思う方も多いかと思いますが、私たちが手動コーヒーミルを勧めるのには理由があります。
実は手動コーヒーミルには、「電動化」という裏技があるんです。
手動コーヒーミルを電動化することで、唯一と言っていい欠点の「挽くのに疲れる」という欠点を解消することができてしまいます。
手動コーヒーミルの電動化「コーヒードリリング」
電動工具の1種であるドリルドライバー。
これと手動コーヒーミルのシャフトを、アダプターで接続。
ハンドルの代わりに、ドリルドライバーでコーヒーミルを回します。
この方法のことを、ミルラボでは「コーヒードリリング」と呼んでいます。
2012年頃から専用のアダプターが販売され出して、愛好家も徐々に増えている裏技です。
コーヒードリリングであれば、コーヒー豆を挽く速度も電動コニカルカッターと同等になります。
そして手動コーヒーミルの唯一と言っていい欠点、「挽くのに疲れる」という点を解消することができてしまいます。
なおかつ掃除がしやすい、アウトドアで使えるといった、手動コーヒーの長所を全て引き継ぐことができるんです。
特にアウトドアでの有用性は抜群。
BBQで大人数のコーヒーを淹れたい時でも、電源がなくても楽々大量のコーヒー豆を挽くことができます。
また、体験しないとなかなか伝わりにくいですが、コーヒー豆を高速で挽く爽快感は手動のとき以上です。
今まで挽くのに苦労していたコーヒー豆がみるみる挽かれていく感触は、一種のカタルシスを感じさせます。
下手に電動コーヒーミルを買うより、手動コーヒーミル+ドリルドライバーの組み合わせの方が優れている点が多く、現在ミルラボではこの方法をおすすめします。
手動 | ドリリング | 電動 | |||
---|---|---|---|---|---|
コニカルカッター | コニカルカッター | コニカルカッター | フラットカッター | ブレードグラインダー | |
価格 | 1,500円程度台〜 | 4,500円程度台〜 | 10,000円程度〜 | 20,000円程度〜 | 2,000円程度〜 |
エスプレッソ挽き (極細挽き) | ◯ できるもの多い | ◯ できるものが多い | ◯ できるものが多い | △ 歯を交換すれば可 | × 不可 |
粒度の均一性 | △〜◯ 構造による | △〜◯ 構造による | ◯ 均一 | ◎ 特に均一 | × ばらつく |
掃除のしやすさ | ◯ 分解可、丸洗い | ◯ 分解可、丸洗い | × 分解難 | × 分解難 | ◎ 分解不要 |
挽く速度 | × 遅い | ◯ 速い | ◯ 速い | ◎ 特に速い | ◎ 特に速い |
豆を挽く感触 | ◯ あり | ◯ 爽快 | × なし | × なし | × なし |
アウトドア | ◯ 電源不要 | ◯ 電源不要 | × 重い、電源要 | × 重い、電源要 | △ 軽い、電源要 |
騒音 | ◯ 静か | △〜◯ それなり | × かなりうるさい | △ うるさい | △〜◯ それなり |
詳細は、「コーヒードリリングとは?」のリンク先をご確認ください。
電動コーヒーミルならおすすめの方式は?
電動コーヒーミルを選ぶ場合であれば、初級者〜中級者の方には電動コニカルカッターをおすすめします。
電動コニカルカッターのコーヒーミルは、価格もそこまで高くはなく、また大きな欠点はありません。
そしてこれ1台で、ネルドリップからエスプレッソまで様々な抽出方法に対応できます。
これから様々な抽出方法を試してみたい初級者〜中級者の方には、ぴったりの1台です。
電動フラットカッターは、粒度の均一性・挽く速度の点で非常に優れているのですが、エスプレッソが不得意な点と数万円という敷居の高い価格の点で、万人にはおすすめしづらいです。
ご自分のコーヒーの嗜好が完全に定まり、細挽き〜粗挽きしか使わない、雑味をとことんまで抑えたい、という上級者の方には電動フラットカッターがピッタリです。