以前にご紹介したように、当サイトではコーヒーの挽き方を5段階で分類しています。
- 粗挽き
- 中挽き
- 中細引き
- 細引き
- 極細引き
分類はわかったものの、「それぞれどのくらいの大きさなの?」という疑問が出てくると思います。
しかし困ったことに、この挽き方の定義は、統一した見解がありません。
「フレンチプレスは粗挽きがおすすめって書いてあるけど、今挽き終わったコーヒーは本当に粗挽きになってるのかな?」
「マキネッタ用に細挽きに挽いたつもりだけど、何か粗すぎる気がする。これってもしかして中細挽き?」
など、コーヒーミルを使いはじめたばかりの方は悩んでしまいますよね。
私自身、「これって一体何挽きなんだろう?」と悩んだ経験が多々あります。
…実は今も悩むことが多いです。
この原因は、「挽き方の定義」がコーヒー業界でちゃんと共有できていないこと。
粗挽きってこのくらい、細挽きってこのくらい、と主観で話をしているから、迷ってしまいます。
このページでは、「挽き方の定義」をちゃんと定量的にし、誰もが主観なく共有できることを目標にします。
コーヒーの挽き方の定義を比較する
例によって、各紹介元ごとに挽き方の定義を比較しました。
UCC | HARIO | コーヒーコツの科学 | コーヒーの大辞典 | コーヒー学検定上級 | |
---|---|---|---|---|---|
粗挽き | ザラメ糖程度 | ザラメ程度 | ざらめ糖以上 | ざらめ糖ほどの大きさ | 0.85~0.92 mm |
中挽き | グラニュー糖とザラメの中間程度 | グラニュー糖〜ザラメの中間 | グラニュー糖程度 | ざらめ糖とグラニュー糖の中間ほど | 0.60~0.71 mm |
中細挽き | グラニュー糖程度 | グラニュー糖〜ザラメの中間 | 中挽きと細挽きの中間 | × | 0.55~0.59 mm |
細挽き | 上白糖とグラニュー糖の中間ぐらい | グラニュー糖程度 | グラニュー糖と白砂糖の中間 | グラニュー糖ほどの大きさ | 0.46~0.54 mm |
極細挽き | 砂糖に例えると「上白糖」くらいのパウダー状 | × | 細挽きより細かい | 最も細かい | 〜0.45 mm |
表からもわかるように、多くの紹介元は「ザラメ糖」や「グラニュー糖」などの、身近な粉体を目安として定義しています。
ただし、その定義は結構異なっています。
粗挽きは大体の書籍が「ザラメ糖程度」と表現していますが、中挽き以下になると、みんなばらばらです。
そもそも、ザラメ糖やグラニュー糖のサイズがどのくらいかわからないと、自分で挽いたコーヒーが何挽きなのかわからないですよね。
一方、「コーヒー学検定上級」では挽き方の定義を「粒子径」で表現しています。
こちらは一見定量的なのですが、2点問題があります。
1つは、この大きさがどんな粒子径を示しているかわからないこと。
粉体は、全てが同じ粒子径ではなく、ある程度の分布を持っています。
そのため、粒度とはあくまで分布でしか語れません。
とはいえ、毎回分布でしか議論できないと不便であるため、一般的には分布の中の代表的な粒子径で粒度を表現します。
その代表的な粒子径とは、主に下記になります。
- モード径 ・・・最も頻繁に現れる粒子径。分布のピークにあたる。
- メディアン径 ・・・粉体を粒径から2つに分けたとき、大きい粒径と小さい粒径が50%となる粒径
- 平均径 ・・・母集団の平均の粒径
「コーヒー学検定上級」の定義では、記載されている粒子の大きさが「モード径」をさすのか「メディアン径」をさすのか、それとも別なのか、わかりません。
そこが定義してあれば、より定量的だったのですが、おしいです。
もう1つの問題は、定義されている粒子径がやけに小さく、そして範囲が狭いこと。
仮にこの粒子径の定義がモード径だったとして、粗挽きで0.85~0.92 mmはかなり小さく感じます。
少なくともザラメのサイズではないでしょう。
また、中細挽きの範囲が0.55~0.59 mm、細挽きの範囲が0.46~0.54 mmと、範囲の幅が0.1mmもありません。
果たして、これは肉眼で判別できるレベルなのでしょうか。
体感でのこれらは、もう少し粒径に明確な差異がある気がします。
砂糖の大きさを参考にコーヒーの挽き方を定義する
「コーヒー学検定上級」の定義を洗練させて、例えば、
モード径が◯〜◯mm: ◯挽き
という定義ならば、定量的で明確です。
当サイトとしては、この方法でコーヒーの挽き方を再定義していきたいと思います。
ただし、「コーヒー学検定上級」の粒子径の定義はかなり小さいので、その他紹介元の「ザラメ糖」「グラニュー糖」といった表現を参考に粒子径を再考します。
砂糖の種類
そもそも、ザラメ糖やグラニュー糖、そして上白糖とはどのような砂糖なのでしょうか。
「alic(独立行政法人 農畜産業振興機構)」の消費者コーナーから引用してみました。
ザラメ糖(白双糖)
結晶がグラニュー糖よりも大きく、無色透明の砂糖です。一般的に家庭で使われることは少なく、高級な菓子や飲料に多く使われます。
グラニュー糖
上白糖よりも結晶の大きい、サラサラとした感じの砂糖です。クセのない淡白な甘さを持つので、香りを楽しむコーヒーや紅茶に最適です。また、菓子用や調理用にも広く使われます。
上白糖
日本の家庭でもっとも一般的に使用されている砂糖です。結晶が細かく、しっとりとしたソフトな風味の砂糖で、白砂糖とも呼ばれます。
ちなみに、ザラメ糖の名前の由来は「ザラザラした感触」から、グラニュー糖は英語で「粉砕した」を意味する「granulated」から来ているようです。
砂糖の大きさ
それでは、これらの砂糖のサイズってどのくらいなんでしょう。
それを知るために、国内で砂糖のシェアトップ2の「日新製糖」「伊藤忠製糖」の製品、そして「alic(独立行政法人 農畜産業振興機構)」の情報を元に、「ザラメ糖(白ザラ糖)」「グラニュー糖」「上白糖(白砂糖)」の粒子径をまとめました。
日新製糖 | 伊藤忠製糖 | alic | ||
---|---|---|---|---|
ザラメ | 製品名 | 白ザラ糖 F | 中双糖 CIQ | × |
粒径 | 2.00〜2.20 mm | 1.50〜2.10 mm | × | |
グラニュー糖 | 製品名 | グラニュ糖 G | グラニュ糖 CIC | × |
粒径 | 0.45〜0.60 mm | 0.44〜0.56 mm | 0.25〜0.55 mm | |
上白糖 | 製品名 | × | × | × |
粒径 | × | × | 0.10〜0.20 mm |
ザラメ糖は約2mm、グラニュー糖は約0.5mm、そして上白糖は約0.15mmくらいのようです。
ただし上白糖は小さすぎるからか、日新製糖や伊藤忠製糖では粒径の記載はありませんでした。
意外なのが、思ったよりグラニュー糖は小さいということ。
「UCC」や「コーヒーのコツの科学」では、中細挽きを「グラニュー糖程度」と定義していましたが、これではかなり細かくなってしまいますね。
また、これらの紹介元では中挽きを「グラニュー糖とザラメ糖の中間程度」と表現しています。
グラニュー糖とザラメ糖の間となると、0.5mm〜2mmと、粒子径にかなり幅ができてしまします。
これを全て「中挽き」と定義してしまうと、実際より中挽きの幅が広すぎるような気もします。
これらを考えると、コーヒーの挽き方の定義は「HARIO」や「コーヒーの大辞典」のように、細挽きを「グラニュー糖程度」、中細挽きと中挽きを合わせて「グラニュー糖とザラメ糖の中間程度」とした方が、現実の感覚に合っています。
当サイトの考える「コーヒーの挽き方の定義」では、「HARIO」や「コーヒーの大辞典」の記述を参考に、粒子径を定義していきたいと思います。
当サイトでのコーヒーの挽き方の定義
以上をまとめたのが、下の表です。
挽き方(日本語) | 挽き方(英語) | 定義(定性) | 定義(定量) |
---|---|---|---|
粗挽き | Coarse | ザラメ糖程度 | モード径が1.400mm以上2.360mm未満 |
中挽き | Medium | ザラメ糖とグラニュー糖の中間程度 | モード径が0.850mm以上1.400mm未満 |
中細挽き | Medium Fine | ザラメ糖とグラニュー糖の中間程度 | モード径が0.600mm以上0.850mm未満 |
細挽き | Fine | グラニュー糖程度 | モード径が0.425mm以上0.600mm未満 |
極細挽き | Extra Fine | グラニュー糖より細かい | モード径が0.212mm以上0.425mm未満 |
粒径の範囲については、「JIS Z 8801 試験用ふるい-第1部:金属製網ふるい(=ISO 565)」に基づき、試験用ふるいの目開きにあわせています。
試験用ふるいには、アメリカの規格であるASTME規格のふるいや、古くから使われているTYLER社のふるいなど、様々な規格があります。
ここでは国際規格であるISOに準拠した試験用ふるいを想定した定義にしました。
この定義であれば、カフェでもご家庭でもご自分のコーヒーの挽き方を確認することが可能です。
また、共通のものさしを持つことで、主観が入ることなく挽き方を共有できるようになります。
当サイトでは、こちらを「挽き方の定義」として使用していきます。